中医学では人の体を作る基本物質を「気・血・水」と言います。人はこの「気・血・水」があることで生命を維持し、また内側からの美しさも保っていると考えています。
気(き)は内臓を正常に働かせているエネルギーで、これがたっぷりあると体にエネルギーが満ち溢れ、やる気や元気が出て活動的に過ごせます。
血(けつ)は栄養と酸素を体の隅々まで運ぶ血液のことで、水(すい)は血液以外の体の水分を指します。
また「気・血・水」は、食べたものから「脾(ひ)」という消化吸収機能の働きにより作りだされます。脾とは脾臓だけを指すのではなく、胃や腸も含む「消化吸収排泄」にかかわる全ての“働き”の総称だと考えてください。
これら三要素が体にあることで、人は健康に、内側からみずみずしくツヤのある美しい肌や髪を作り出すことができるのです。このことからも皆さんが普段食べているものがいかに自分の未来の体を作っているか、毎日の食事がいかに大切かということが分かります。
さて、この気・血・水ですが、十分な量が体にあり、それらがスムーズに流れているということが、美と健康を保つ上での必須条件です。不足したり流れが悪くなったりすると、次第に体のバランスを崩していきます。これがそれぞれ個々の体質になり、体から様々な不快症状のサインを出し始めます。
気 | 血 | 水 | |
流れが悪い | 気滞(きたい) (気の流れが悪い) |
瘀血(おけつ) (血の流れが悪い) |
水毒(すいどく) (水の流れが悪い) |
不足 | 気虚(ききょ) (気が不足) |
血虚(けっきょ) (血が不足) |
陰虚(いんきょ) (水が不足) |
それぞれの体質(=証)が引き起こす典型的な症状と、体質改善に適する食材をご紹介します。自分に当てはまる証があれば適する食材を意識して、週に少なくとも2,3回は食べるようにしてみてください。未来の体はちゃんとそれに応えてくれますよ!
◆気の流れが悪い(気滞)
- イライラしやすい、ゲップやガスが多い、体のサイド(片頭痛や脇痛)やお腹に張った
痛みが出やすいなど - 適する食材(セロリ・せり・三つ葉・春菊・みかん・レモン・ゆずなど)
◆気が不足(気虚)
- 慢性疲労・風邪をひきやすい、汗がだらだら出る、やる気が出ない、無気力など
- 適する食材(山芋・鶏肉・牛肉・かぼちゃ・にんじん・きのこ類など)
◆血の流れが悪い(瘀血)
- シミやクマができやすい、傷跡が治りにくい、舌や唇の色が紫っぽい、生理痛があり、月経血に血の塊が混じるなど
- 適する食材(黒豆・黒きくらげ・紅花・青背の魚・ホウレンソウ・小松菜など)
◆血が不足(血虚)
- めまい、ふらつき、立ちくらみがする、視力低下、爪が割れやすい、動悸や息切れなど
- 適する食材(なつめ・レバー・黒豆・黒ゴマ・ラム肉など)
◆水の流れが悪い(水毒)
- 下半身が特に冷えやすい、水太り、痰が多い、軟便ぎみ、下痢をしやすい、むくみやすいなど
- 適する食材(陳皮・はと麦・緑豆・小豆・もやし・春雨・とうもろこしなど)
◆水が不足(陰虚)
- 皮膚や粘膜が乾燥する、掌や足の裏、顔ののぼせ感がある、ドライアイ、寝汗をかくなど
- 適する食材(白きくらげ・梨・豆腐・豆乳・ゆりね・牡蠣・ハマグリなど)
1月の薬膳レシピ
冬はエネルギー代謝が低下し、乾燥や寒さによって体はさまざまな影響を受ける季節。
中医学の養生法では、乾燥する季節には「肺」を、寒さの厳しい冬は「腎」をいたわるべきとの教えがあります。
「肺」は鼻や喉などの呼吸器系と肌を管轄していますが、それらは常に外気にさらされており病原菌などが侵入しやすい上、「肺」は乾燥にとても弱い性質を持っています。
また「腎」は人の生命力や抵抗力、強壮、老化と深い関わりがあり、「腎」が弱ると足腰のだるい痛み、冷え性や記憶力低下、精力減退、白髪、脱髪などあらゆる老化現象となって現れます。乾燥に弱い「肺」、寒さに弱い「腎」をいたわり、冬の厳しい季節を元気に乗り切りましょう。
「免疫力を高めて風邪予防 冬の養生鍋」
冬の献立は、鍋やスープ、煮込み料理、冷めにくいとろみのついたあんかけ料理などがおすすめ。内側から体温が上がるだけでなく、同時にお部屋も暖まって一石二鳥です!
<材料>4-5人分
かつおと昆布のだし汁 | 1000cc | |
カブ(大) | 2個 | 皮をむいてすりおろす |
生鮭 | 2切れ | 食べやすく一口大に切っておく |
海老 | 4-5匹 | 洗って酒をまぶす |
白きくらげ(乾燥) | 10g | 水につけて戻し、石づきを落として一口大に切っておく |
白ねぎ | 1本分 | 斜め薄切り |
ゆりね | 1塊 | 根元をよく洗って一枚一枚はがす |
白菜 | 1/4束 | 食べやすくざく切り |
豆腐 | 1丁 | 6つに切る |
にら | 1束 | 根元を落として3~4センチのざく切り |
ポン酢しょうゆ、青ねぎ小口切り、針柚子、紅葉おろしなどお好みで。
<作り方>
鍋にだし汁1000ccとすりおろしたカブ、ほかの具を並べて入れ、やわらかくなるまで煮る。煮上がったらポン酢しょうゆをつけて食べる。
<効能>
体を温め滋養強壮に富み免疫力を高める海老、胃腸機能を活性化し、消化吸収を促進する鮭、呼吸器を乾燥から守る白い食材がたっぷり入った冬の養生鍋。
雪見鍋は普通大根おろしを使うが、生の大根はやや冷やす性質のため、ここでは温性のカブを使う。カブにはお腹の冷えを取り除き、咳を止め、のどの渇きを癒す効果もある。
白きくらげ、豆腐、白菜、ゆりね、白ねぎは風邪の引きはじめや呼吸器の乾燥に適している食材。ニラは青菜の中でも特に「腎」に働きかけ精をつけると言われる。