【赤堀真澄の薬膳コラム】 8月号~夏バテとは?夏バテの予防から、夏バテになってしまった時の薬膳~

自然界は夏、真っ盛り!
この盛夏の暑邪により、汗の出過ぎによる体の潤い不足に、気の消耗が加わったことで発症する病を夏バテと言います。特に日本の夏は高温多湿になるため、汗をかいた後も皮膚表面がじっとりと湿ったままで、これが体温の放散を妨げます。汗をかく割に体の熱をうまく外へ出せず、火照りやのぼせ、口の渇きなどを強く感じます。そのためどうしても冷たいものをガブガブ飲んだり、アイスを食べたりしてしまうのですが、これもまた夏バテ一直線!

食べたもの、飲んだものを消化吸収して体に必要な「気(き)・血(けつ)・水(すい)」を作り、それを体に運搬するのが脾(ひ)という働きです。この脾は冷たいものにめっぽう弱く、冷えたビール、ジュースに含まれる砂糖や炭酸飲料水、冷たいアイスなどはこの脾の働きを弱めて消化能力と運搬能力を衰えさせます。
飲んだ水分は全ての量が体の潤いになるのではなく、この脾の働きで消化吸収されてはじめて栄養たっぷりな体を潤す「水」となります。
従って、冷たいものばかり飲んでいると脾の働きが弱り、お腹の中でポチャポチャと水が溜まったまま。これが食欲不振や胃の重み、だるさ、息切れ、いつまでも疲れが取れない全身倦怠感となって現れます。これが夏バテの正体で、中医学では元気の「気」と体を潤す「陰」が両方不足する「気陰両虚」の証と考えます。

夏バテにならないための養生とは

誰でもこの時期暑いのは仕方がありません。いかに内側から体の火照りを冷ますか、気を補って疲れを残したままにしないかがポイントになってきます。

1、水分補給の方法を見直す
まずは飲み物は、麦茶かはと麦茶をたっぷり沸かしておき、のどが渇く前に少しずつ水分補給をすること。この時大切なのは、氷を入れたり冷蔵庫で冷やすとのど越しが良いため一度にゴクゴクと飲み過ぎてしまいます。お茶は常温のものを少しずつこまめに飲むこと。

2、食欲が落ちて下痢をしはじめたら要注意
お腹に溜まった余分な水分が原因で、体が重だるく、下痢が始まったら要注意。こうなってしまったら、山芋をすりおろしてとろろご飯にしたり、刻んでスープやおかゆに入れて食べましょう。
山芋は胃腸の働きを高めて気を補い、水分代謝を正常にします。粘膜を保護するので、ネバネバ系食品は下痢の時に柔らかく煮て、消化に良い状態にして食べるようにして下さい。

3、朝から暑くて食欲が出ない時は
暑くて朝から何も食べる気がしない時は、酵素をたっぷり含むキウイやパイナップルをジュースにして飲むのもおすすめです。ともに体を冷ます食材で、脾の働きを高めて消化を助け、体内の潤いを増やしてのどの渇きを止めるのによい組み合わせです。酸味が疲労回復にも役立ちます。

4、体液を増やして火照りを冷ます食材で内側から潤いを増やす
夏に旬を迎える瓜類こそ、夏バテ予防のお助け食材。夏の暑い時期にはゴーヤ、きゅうり、スイカ、冬瓜などを積極的に摂るのをおすすめします。
汗だくで帰宅した時には、クーラーをスイッチオンしてガンガンにきかせるのではなく、まずはスイカを食べてみましょう。みずみずしく体を潤し、ほてりがスーっと冷めていくのを実感できます。スイカをそのまま食べるのに飽きたら、果肉の赤い部分を一口大程度に切ってタネを取り、豆乳とはちみつを加えてミキサーにかけてスムージーにしてみては?豆乳もはちみつも体液を増やして潤いを増やす食材なので、夏の暑さで火照った体が喜ぶ、最高に美味しい薬膳ドリンクになりますよ!

5、三つの首を冷やす
首、手首、足首は太い血管が通っている場所です。ここを冷やすか温めるかで体内の寒熱を素早く調節できます。暑い時期は首に髪の毛がかからないようにまとめ、首周りの通気性を良くしておきます。さらに首に冷たいタオルを巻いたり、手首や足首を水で冷やすと体全体の火照りを素早く冷ませます。

夏バテ予防によい食材で作る夏バテ予防の献立のヒント

  1. 疲労回復効果の高い豚肉、脾の機能を高める白身魚、「陰」を補う魚介類をメインに!
  2. 夏野菜のナスやしし唐、ピーマン、かぼちゃ、トマト、冬瓜やキュウリなどの瓜類を組み合わせて!
  3. 味付けは食欲を増すピリ辛にするか、疲労回復のために酸味を利かせる!
  4. 調理法はツルっとした舌触りになるように、だしに漬けるか、ゼラチンや寒天で固めたメニューにして、夏ならではの涼しげに見せるメニューもおすすめ!
  5. 喉が乾いたらスイカやキウイ、パイナップルをそのまま食べるかジュースにして、冷たいビールや清涼飲料水を飲むのが癖にならないように!

夏バテ対策の薬膳レシピ

「豚肉の山芋シソ巻き 梅風味蒸し」

疲労効果の高い豚肉は体を潤す食材でもあるため、夏バテ予防に最適。山芋で気を補って、乱れた水分代謝を正常にします。シソと梅は解毒と消化を助ける働きがあり、シソの爽やかな芳香が暑さでイライラしがちな気持ちをすっきりさせ、梅の酸味は疲労物質の排泄を促し、食欲不振を解消します。

(材料)4人分

豚ロース薄切り400g、紫蘇の葉13~14枚、長いも10センチ長さ、梅干し(大)3個、みりん大さじ1、塩コショウ適量、ポン酢しょうゆ適量。

(作り方)

  1. 梅干しはタネを取り、包丁でたたいてみりんを加えて混ぜておく。長いもは皮をむいて5センチ程度の長さの細切りにしておく。
  2. まな板に豚薄切り肉2枚を延ばして1センチほど重なるように平らに置く。(2枚の豚肉をくっつけて大き目の1枚にするように)軽く塩コショウを振る。
  3. 豚肉の上にシソの葉を一枚置き、その上にたたいた梅を小さじ1程度ぬり、山芋の細切りを5~6本重ねて芯にして手前からきっちりと巻いていく。
    巻き終わりを下にして蒸し皿に並べる。
  4. 蒸気の上がった蒸し器に入れ、8分蒸す。
  5. 切り口が見えるように斜めに2つに切り、皿に並べ、ポン酢しょうゆを添える。

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