【赤堀真澄の薬膳コラム】 9月号 「五色のチカラ・白」

皆様こんにちは!
朝晩の空気はすこしヒンヤリしてきて、やはり自然界では秋に向けて徐々に陰陽が交代してきていると感じますね。
秋と関連深い臓器は「肺」。
肺は呼吸器系統(鼻、喉、気管支)と肌を司り、秋の空気の乾燥に最も弱い臓器とされています。そしてこの乾燥で肺が弱ると、鼻の穴の中がパリパリ、喉がイガイガするだけでなく、お肌も潤いを失い乾いてしまうという仕組みになっています。カラ咳が出たり、お通じが出にくくなったりするのも肺が乾燥している証拠。肌荒れや乾燥、シワのトラブルもこの時期出やすくなります。
これからどんどん加速する空気の乾燥からお肌を守るには、スキンケアだけの保湿ではなく、内側からも「肺」を潤して徹底的に乾燥から守りましょう。肺が潤うことで呼吸器系統を守ることにもなるので、風邪も引きにくくなり一石二鳥ですよ!!

「肺」を潤す食品はズバリ「白い食材」。豆腐、豆乳、松の実、大根、山芋、レンコン、白きくらげ、梨などがこの季節、特に体が喜ぶ食材です。体液を増やして内側から直接潤いを増やします。毎日手を変え品を変え、白い食材を食卓に登場させ、お肌や呼吸器に潤いのベールをまとわせましょう!

【白きくらげ】

  • 性=平(食べた後、体を温めも冷やしもしません)
  • 帰経=肺・胃(身体に入ると肺と胃に入っていって効能を発揮)
  • 白きくらげは体液を増やして肺を潤したり胃を保養する食材です
  • 体力低下や体の渇きによる息切れ、カラ咳、皮膚の乾燥によいものです

白きくらげ(銀耳)は肺を潤す効果が高く、咳が止まらない、痰が切れにくい時などに摂ると良い食べ物です。白きくらげは水で戻し10分茹でるとまるでワカメのようなコリコリした食感、それが2時間茹でると、今度は糸を引くほどトロトロになるという不思議な食べ物です。皮膜を保護して風邪を予防したり肌の潤い効果を高めます。白きくらげのもう一つの特徴は、その驚くべきコラーゲン含有量!あの高価なツバメの巣に匹敵するほどと言われています。定期的に摂ることで肌の潤いやハリ、弾力を保ちます。白きくらげをデザートにする時は是非トロトロになるまで根気よく煮込んで。ちなみに白きくらげも黒きくらげも、クラゲではなくキノコです!

~白きくらげと梨の美肌デザート~

(材料)4人分
白きくらげ(乾燥)5g、 梨1個、 氷砂糖70g、 クコの実大さじ1、 水適量。

(作り方)

  1. 白きくらげはたっぷりの水で戻すと4-5倍に膨れる。濃い黄色をした密度の詰まった固い部分(石づきにあたる)を取り除き、白っぽく柔らかい部分を一口大に包丁でざく切りする。クコの実は洗っておく。
  2. 梨はくし型に切って皮と芯を取り、一口大の角切りにしておく。
  3. 鍋に白きくらげと、梨、かぶるぐらいの水を入れて火にかける。沸騰したら弱火にしてそのまま白きくらげがトロトロになるまで1時間半~2時間煮込む。水が少なくなったら適宜足す。最終的に白きくらげと梨が入った状態で800ccぐらいになるまで煮詰める。
  4. 最後に氷砂糖を溶かしてから容器に移し冷蔵庫で冷やす。器に盛りクコの実をトッピングする。

(効能)
白きくらげも梨も体液を増やして呼吸器や肌を潤す食材。皮膚の乾燥を防ぎ肌にハリと弾力を与えるので、中国ではこのレシピは肌を美しくする薬膳美肌デザートとして大変有名です!秋の乾燥のシーズンのおもてなしにはぜひ美味しくて滋味あふれるこのデザートを。美肌効果のウンチクをたっぷりと添えて出すと、女性なら誰もが喜んで食べてくれますよ!

【松の実】

  • 性=温性(食べた後、体を温めます)
  • 帰経=肝・肺・大腸(効能が肝・肺・大腸に作用します)
  • 松の実は肺を潤し乾燥からお肌を守る食材です
  • 腸を潤すので便秘改善になります

松の実は別名「不老長寿の吉祥木」とも呼ばれ、滋養強壮効果の高い元気のエネルギーを補う食材。特に肺の気を強くするので、秋の季節の補気食材としては最適です!松の実はゴマやナッツの感覚で、炒ってサラダや肉料理、和え物に散らしたり、炊き込みご飯やキムチに混ぜてもとても美味しく食べられます。寒い季節の汁ものや鍋ものに浮かべるだけでもOK!コリコリした食感と香ばしい風味が病みつきになりますよ。

~松の実がゆ~

(材料)2人分
松の実1/2カップ、米1/2カップ、塩小さじ1/2。

(作り方)

  1. 松の実と米はよく洗って両方1時間以上水に漬けておく。
  2. 1をざるにあげて水気を切り水300ccを加えて滑らかになるまでミキサーにかけ、裏ごしする。
  3. 鍋に移し沸騰するまでたえずかき混ぜながら火にかける。
  4. とろみが付いたら弱火にしてさらに混ぜ続けながらさらに10分火を通す。
    粘度が強すぎてぽってりし過ぎたら少し水でのばし、塩を加えて味を調える。

(効能)韓国ではとても有名な、松の実がたっぷり摂れる滋養強壮おかゆ。食欲のない朝や元気の出ないときにもおすすめです。お肌をみずみずしく保ち、大腸を潤してお通じ促進にもなるので美肌をつくる一品としてもおすすめです!

【ゆりね】

  • 性=微寒(食べた後、身体を冷まします)
  • 帰経=心・肺(効能が心と肺に作用します)
  • ゆりねは肺を潤し咳を止めてお肌を潤します
  • イライラを鎮めて精神を安定させます

和食でゆりねといえば茶碗蒸しに入っているものというイメージですが、中国ではゆりねは大変ポピュラーな食材です。体の潤いを増やし、呼吸器系や肌を潤すだけでなく精神安定作用も高いので、ぐっすり眠れない、気持ちが落ち込みふさぎ込んでしまうなど憂鬱な気分の改善にも。秋特有のメランコリックな精神不安を改善するため、普段からゆりねを献立に上手に取り入れてみましょう。
私が最もおススメするユリ根の使い方は、茹でてから潰して使う方法。こうすることで一度にたくさんの量を使うことができますし、食感や味はまるでジャガイモのマッシュと同じ!空気が乾燥すると、とたんに咳が出る風邪が流行ったりしますが、そうなる季節にはポテトサラダにゆりねの茹でてつぶしたものをまぜて混ぜて使ってみて下さい。ユリ根の存在に気づかれず子供でも嫌がらずに食べますよ。今回はユリ根のマッシュを長イモのすりおろしと合わせて団子仕立てにした、秋の風情にピッタリの和の一品をご紹介します!

~ゆりね団子の滋養くずあん~

(材料)4人分
ゆりね50g、長イモ30g、白玉粉30g+水適量、塩少々。ゆで銀杏4個、しめじ8本。(滋養くずあん材料)だし汁250cc、しょうゆ、みりん各小さじ1、塩少々、生姜のしぼり汁小さじ1、水溶き葛粉(なければ水溶き片栗粉)適量、生姜のすりおろし適量。

(作り方)

  1. ゆりねは1枚ずつはがして根元をきれいに洗ってから充分柔らかくなるまで茹で熱いうちにマッシャーでつぶす。
  2. 長イモは皮をむいてすりおろし、1と塩少々を入れて混ぜ合わせる。
  3. 白玉粉は水大さじ1ぐらいから様子を見て少しずつ加え、滑らかに練ってから2と合わせる。パサつくようなら水を小さじ1ずつ様子を見て足していく。
  4. 手の平の上で丸く生地をのばし、茹でた銀杏と2センチ長さに切ったしめじを包む。しっかりと開け口をとめてまるい形に整えたら、160度の油で転がしながらきつね色にカラリと揚げる。器に1つずつ盛り付ける。
  5. 葛あんの材料を鍋に入れて水溶き葛粉で強めにとろみをつける。ゆりね団子にあんをかけ、生姜汁をしぼり、おろし生姜を天盛りする。

(効能)
長イモのような粘りのある食材も乾燥予防に最適。粘膜を保護してウィルスや細菌から呼吸器を守ります。ゆりね団子は素揚げすることでホクホクした食感になり、とろりとしたくずあんに良く合います。きのこは免疫力を高め、銀杏も咳止めや美肌食材として有名な食材。中に歯ごたえのある具を包むことで食感の違いが楽しめます。水溶き片栗粉の代わりに水溶き葛粉を使うと、風邪の引きはじめにも最適なメニューになりますよ。

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